Cashew books

本を貪るのは好物のカシューナッツを食べるのに似ている

漢検1級(R1-1)の感想

 この頃、仕事が多忙で、あまり漢字の勉強が捗っていない。夜中に参考書や辞書をひろげるが、気付いたら電気を点けたまま寝てしまっている。

 漢字学習の上では非効率的かもしれないが、白川静の辞典を頻繁に参照している。たとえば、「乞」という字は「霊気が流れるかたち」であり、古代中国では「霊気を見てうらなう儀礼」があったという。霊気は地上へも地下へも、自在に行き来するものとして捉えられていた。古代の霊的観念は、動的な対象と捉えられ、現代を生きる我々にとってのそれと大きく異なっていることが判る。(たとえば、アジア宗教論の枠組みで、「グノーシス」が広い霊的概念として使われることがあるが……)

 それで、『漢字音符字典』で「乞」を調べると、「吃・迄・屹・訖」(キツ)、「矻」(コツ)という形声文字の中にも共通する繋がりが見えてくる。「まで」「いたる」などの空間認識にしても、「どもる」という意にしても、さきの霊的儀礼に端を発して派生し形象化した文字に思える。こういう文字の音の系譜を体系的に理解することが非常に重要になってくる。(いっぽう、義務教育で教わるような「部首」の体系の方は、単なる辞書的なカテゴライズに過ぎないことがわかる。)つまり、部首の系列よりも部首ではない音の系列の方が重要で、同じグループのなかで意味や音の相でどういう類似・逸脱が生じているか、というスリリングな判定作業を要すこととなる。

 こういうことを日々調べているのは、記憶の定着という意味では役立つ筈だけれど、漢字検定を受験する上では非効率的だと思う。こういう作業は、学習というよりは寧ろ遊びに近いかもしれない。

 ***

 先日受験した令和元年度1回目の漢検1級の結果は、139点だった。どう頑張っても、現状として概ね7割しか取れなかった。(合格ラインが8割なので、残念ながら不合格)

 ちなみに某サイトの頻出・新出の表を参考に分析してみたところ、私が間違えたもので既出語句のものとしては、以下があった。

 ・嘖々 ※過去6回出題 →頭では分かっていたものの本番で出て来ず。

 ・愧赧 ※過去5回出題 →「赧」の右側が出て来ず。

 ・戛々 ※過去4回出題 →「戛」の下側を書き誤った。

 ・偏諱 ※過去3回出題 →「へん」と誤った。

 ・咸く ※過去2回出題 →「ことごとく」が全く出て来ず。

 この既出5問、計8点分を落としてしまったのは痛手。とはいえ、それでも後13点稼がないといけない。分野別な傾向を見てみると、対類で相当な点を落としている。忽諸、花洛、枌楡、孑孑などは解けなかった。

 それと、四字熟語で「夏虫疑氷(冰)」が解けなかったのは(一級配当じゃないので)仕方ないとしても、「磑風舂雨」(「磑」の書き誤り)、「肩摩轂撃」(「轂」の書き誤り)、「縞衣綦巾」(「綦」の下が出て来なかった)など、熟語自体は知っているのに書き誤ってしまった。ここで6点分も落としてしまうとは全然駄目だな……と反省する。

 7割から8割まで到達するには、(私にとっては)かなり高い壁を乗り越えなければならないようだ……。

f:id:momokawataro:20191006024613j:plain