Cashew books

本を貪るのは好物のカシューナッツを食べるのに似ている

年末のご挨拶

 今年ももう大晦日ですね。ブログの更新が1年以上滞ってしまい、申し訳ありません。

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 今年は仕事の方も少し落ち着いてきて、前年よりは休日の時間が増えたのだが、小説を読むことも殆どせず、趣味のピアノを弾くこともあまりなかった。家庭のこと、料理のこと、検定試験漢検仏検の勉強くらいしか出来ずじまい。あとは、暇つぶしに、たまにスマホからヤフコメを投稿したりする。(今年は2度、1000いいねを超えたことがあった。政治と大学関連だった。ああいう世界は、いかにも短くウィットの効いたものが万人受けするみたいだ。)

 仏検は念願の合格を果たしたが、漢検は未だに苦戦している。隙間時間で漢検辞典や三省堂の辞典を頭から最後まで繰り返し読んでいるが、裏急後重、繍腸、筑羅などには手も足も出ない。(昔、準1級の勉強をしたときに、錦心繍腸の類は頭に入れてはいたが…)今年からは広辞苑や日国もスマホで活用しているが、横断検索機能、またはブックマーク機能の優秀さには目を瞠る。広辞苑全文検索機能を他の辞典でも出来るように改良してほしいですね)

 漢字の奥深さも勿論だが、特に外国語の深遠さに魅せられている。もし時間が有り余っていたら、とにかく外国語に浸っていたいと思う。勉強しているという感覚じゃなくて、単に遊んでいる感覚。仏語については、『新スタンダード仏和辞典』という辞典をいまだに愛用しているが、情報が古臭いといわれる辞典なので、私の脳内を渦巻いている知識もだいぶ古臭いものなのだろう。

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 (例年にくらべて全然読めなかったのですが)今年読了した面白かった本を、以下のとおり5冊挙げます。

 ①『素晴らしい低空飛行』(阿部日奈子著、書肆山田、2019年)

 ②『平家物語』(古川日出男訳、河出書房新社、2016年)

 ③『マレー素描集』(アルフィアン・サアット著、藤井光訳、書肆侃侃房、2021年)

 ④『Schoolgirl』(九段理江、「文學界」2021年12月号)

 ⑤『ジョイ・ウイリアムズ短篇集』(ジョイ・ウイリアムズ著、川澄英男訳、彩流社、1990年) *1

 ※マレー素描集は知人に貸しているため、現物がなく、写真に収められませんでした。

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 そういえば、夏あたりにプラトン『法律』を読み、以下のくだりが興味深かったので。

Again, when a man gives way to pleasures contrary to the counsel and commendation of the lawgiver, he is by no means conferring honor on his soul, but rather dishonor, by loading it with woes and remorse. Again, in the opposite case, when toils, fears, hardships and pains are commended, and a man flinches from them, instead of stoutly enduring them,—then by his flinching he confers no honor on his soul; for by all such actions he renders it dishonored. (Leges727c)

 こういう思想は神への信仰の問題から生じるのですが、何だか奇異に映るのは、今の私たちがそれほど無神論実存主義に支配されているからでしょうか。

 プラトンの思想では、生を賛美することは魂にとっての恥辱とか、ただ無為に長生きするよりも有意義で短い人生の方がいいというわけですが、特にこの法律という著作の中での発言であるからこそ興味深いです。おそらく、ドストエフスキーがメスを入れようとしたのはこういう神や霊魂の問題、そこからくる不自由さであり、アリョーシャの銃殺せよという言葉こそが唯一の突破口だったのだろうと思いました。

 それでは、皆さまにとって明くる年も美意延年となりますよう、ご祈念申し上げます。

*1:何でこんなに面白いのに廃刊のままで、文庫化されないんでしょうか…。平易な文章で、スマートに短篇としてまとまっていて、需要があると思いますが。編集者さん…