万有回

主に趣味の読書について綴っていければと思います。「昭和の残り滓」といわれる世代。

早池峰山のヒメコザクラ

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 この時期にしか咲かないヒメコザクラを見たくなって、早池峰山へ。小田越付近の駐車場に車を停められるか心配していたが、山開き前ということもあってか、無事停めることができた。

 一合目御門口から上を見上げ、ハイマツ帯と蛇紋岩の織り成す風景を見て、子どもの頃を思い出し、すごく懐かしい気分になった。

  早池峰山は嘗ては女人禁制の霊山でもあり、科学的にも歴史的にも未だに解明されていない不思議なことばかりだ。特に、今回は登りながらやたら思索的になってしまった。でも、それは宇宙の摂理に庇護された安全圏だから出来ることなのだ。――というのも、ジャック・ロンドンによると、「不死」や「宇宙における人間の位置」などという観念に至らないくらい、地球の末端は壮絶だ。この球体が宇宙から翻弄され、攻撃を仕掛けられるということに全く気付かないくらいなのだから。

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 五合目の御金蔵。ここで願い事をすれば金運に御利益がある、といわれるスポット。せっかくなので手を合わせて祈願する。積み上げられた岩のかたちが金に見えてくるのが不思議。残念ながら、イワウメはまだ咲いていなかった。

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 天候も良く、竜ヶ馬場から後ろの薬師岳がくっきりと見渡せた。

 ここが「竜ヶ馬場」というところだと、子どもの頃に一度聞いてから忘れられなくなった。他の場所は大体想像できる名前だが、なぜここだけ「竜」という言葉が宛がわれたのか、非常にミステリアスにおもえてならなかった。

 ちなみに、賢治は「花鳥図譜、八月、早池峯山巓」で、雷鳥に似ているもので、何か哺乳類のような生物が早池峰山に存在している、という内容の詩を書いていた。*1

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 念願のヒメコザクラにも、たくさんお目にかかることができた。サクラソウの仲間だが、絶滅危惧種のため、いまでは早池峰山でしか出会えないようである。小さな花弁がとても可愛らしかった。ヒメコザクラのほか、ミヤマキンバイも咲いていた。

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 よくある構図の写真だが、八合目あたりの鉄梯子。鉄梯子が架けられているこの巨岩は、「天狗の滑り岩」と呼ばれている。

 余談だが、先日、白川静の「常用字解 第二版」を読んでいたら、こざと(阝、もとの形は「阜」)は元々、神が天に陟り降りする時に使う梯のかたちであるとの説があった。この鉄梯子を上りながら、それをふと思い出した。たとえば、「陵」というかたちは、天から降りてきた神霊を迎えて祀る建物を示しており、山が平地に近づいた地勢のところに設けられたため「おか」の意味となったのではないか、とのことだった。

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 山頂の避難小屋までの道には、まだ雪が残っていた。この雪の道を靴の裏で踏みしめたり、滑ったりするのがすごく楽しかった。ここをさーっと滑れたら気持ちが良いだろうな、と思う。が、スキーもパラレルすらできないし、8の字の直滑降になってしまうレベルなので、現実的ではない。

 以前、日の出前に登山した時、雪庇が仄かに青く透明に光ったことがあった。賢治も、「柳沢」という短篇で、夜明け前にオーロラのように岩手山の山頂が光り輝く様子を見て、「さあみんな、祈るのだぞ」と、以下のように法華経の開経偈を唱えるくだりがある。

 ≪無上甚深微妙法/百千萬劫難遭遇/我今見聞得受持/願解如来眞實義≫

 開経偈というのはお経の前に唱える宣言のようなものであるらしく、賢治にとって岩手山の仄暗く光りはじめる不可解な現象は、神秘的な霊的体験に他ならなかった。

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 早池峰山山頂で、中岳・鶏頭山を眺めながらランチタイム……! 残り物の乃が美の食パンで作った卵サンドイッチと、適当に野菜を入れて作ったポタージュスープ、クリーム玄米ブランなどを食べた。クリーム玄米ブランのほかにも、ソイジョイ、1本満足バー、カロリーメイト系は、持ち運びやすく食べやすいので重宝している――。

 あと、コンビニ食でいうと、今回は食べなかったが、ナチュラルローソンシリーズのプロテイン入りのソイクランチチョコにもハマっている。デザート系では、色々試したなかで、セブンイレブンの「ギリシャヨーグルトはちみつ」が個人的に一番美味しかった。あと、ファミマのライザップのサラダチキンバーも重宝しているが、縦長でザックに入れて持ち運びやすいし、シチリア産レモン味で食べやすく国産の鶏肉を使用しているので安心。(ここでバラして申し訳ないのですが、他のコンビニのサラダチキンって実は国産ではないんですよね……( ;∀;))

 早池峰山頂上から概ね5時間かけて、中岳・鶏頭山を縦走するルートがあり、それもずっと気になっているが実現できていない。体力的には筋肉痛もなく余裕だったので、ぜひ次回こそは挑戦してみたい。

 下山後は、ボン・ディアのソフトクリームで乾いた喉を潤した。早池峰山に登るのは3度目だが、以前もこの店に寄ったのだった。

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*1:賢治は、早池峰山だけでなく岩手山についての詩も遺している。1914年、発疹チフスの疑いで入院した時、真っ白な髭をはやし、白い着物をきた岩手山の神がお出になって、手に持った剣で何度も腹を刺されるという霊夢を見、その後高熱が下がったという話もある。また、河原の坊についての詩においても、「ここに棲んでいた坊さんは/真言か天台かわからない」などと書き、山岳がいわゆる宗教的なトポスとなっていたことが窺える。当時はまだ、早池峰講などの山岳信仰も存在していた時代であり、賢治にとって岩手山早池峰山は神聖な霊山という認識だったのかもしれない。