Cashew books

本を貪るのは好物のカシューナッツを食べるのに似ている

日本文学

『人間椅子/押絵と旅する男』(新潮CD)

新潮社から2001年に発売されたCD。佐野史郎の朗読が何ともいえず、湿った静かなトーンの粘り気のある朗読で、独特の変態性や不気味さを感じさせる。「押絵ー」の方で、たとえば、老眼鏡を逆さに覗いた時の「いけません、いけません」という老人の台詞や、…

谷川直子『おしかくさま』

あけましておめでとうございます。皆様のご健康とご多幸をお祈り申し上げます。本年もよろしくお願いいたします。 *** 年末いろいろ本を読んだが、サルトルやプルーストなどフランスの文学を再読したくなって、部屋で大人しく読んでいた。(あとはロメー…

内田百閒傑作集(東芝EMI)

東芝EMIから2006年に発売された内田百閒傑作集。内田朝雄の渋くて落ち着いた声が百閒の世界観にマッチしていて、何ともいえない。その一から六まで全て耳を通したが、その四の「昇天」の朗読だけは別格だという気がする。何十回と繰り返し聴いて、もはや…

大人のための残酷童話(新潮カセットブック)

ここ数年、文学作品の朗読のCDなどを積極的に聴いている。特に車を運転している時など、SDカードに音源を保存しているので、MUSIC STOCKERというナビのモードで朗読を流すことが多い。せっかくなので、好きな朗読について紹介したい。 中学生あたりに手…

大江健三郎『文学ノート』

今年の冬は例年に比べて一段と寒く、雪も降り積もって車で遠出もできない。仕方ないので、近くの古本屋で大江健三郎『文学ノート』(新潮社、1974年)を購入し、おとなしく家で読み耽る。 第4章の「作家が異議申し立てを受ける」で、音楽・演劇・文学などに…

山野浩一『X電車で行こう』

先月、山野浩一氏が逝去したことを知る。数年前からブログを拝読していたので、抗癌剤治療を続けておられたことは存じ上げていた。主に競馬評論の世界で著名であり、作家としては寡作であったが、彼の作品は今でも全く色褪せない傑作である。個人的には文学…

ラベンダーのサシェ

関東地方は梅雨明けしたそうですが、東北地方はまだ雨が降り続いている。僧侶の方々にとっては夏安居の時期、私も真似して大人しく自室で本を読みながら過ごしている。あるいは、庭に咲いたラベンダーを眺めて癒される。 庭に咲いているラベンダーは、フォー…

The Clever Rain Tree

年度末ということで土曜出勤する。僭越ながら、昇任祝いということでお花やお菓子などを頂いたりして、大変有難かった。 勤務先の近所にある和菓子屋で知人とお茶をする。和菓子屋なのにランチプレートというのがあるらしく、注文してみることに。俵型のおむ…

伊藤整『日本文壇史16―大逆事件前後』

久しぶりに1日丸ごと休みだったので、スコーンを作ってみたりした。近くに住んでいる従妹の家に行く用事があったので、その従妹に差し入れすることに。従妹は高校で教鞭を執っているのだけれど、20代後半の女性の部屋とは思えないほどメカメカしている。何…

樋口毅宏『民宿雪国』

何でもいいのでできるだけブログを更新したいと考えているものの、それなりに多忙で趣味に没頭できる時間もなく、話題に乏しいのが現実である。 昨日も一日仕事していたが、殊に日曜日の今日は忙しかった。早朝からいろいろイベントがあって出勤しなければな…

河久弥恵子『コンクリートと高さと人達』

9月末ですが、残暑ですね。1か月前に逆戻りしたかのようです。喫茶店のテラスの噴水が涼しげだったので、撮ってみました。 *** 最近読んだ本のなかで感銘を受けたのが、河久弥恵子『コンクリートと高さと人達』(深夜叢書社、1973年)。四十余年も前と…

村田沙耶香『コンビニ人間』

久しぶりに、神保町のミロンガ・ヌオーバを訪ねた。学生の頃、神保町でバイトしていたが、甘い蜜に引寄せられるように、ミロンガの入口扉をよく開けた。学生の身分にしては敷居が高かったが、重厚な扉を開けた先にひろがる、タンゴの流れる店内の仄暗い雰囲…

蓮實重彦『伯爵夫人』

図書館からの借用なので、一切身銭を切っておらず恐縮である。本作『伯爵夫人』は、「陥没地帯」「オペラ・オペラシオネル」に次ぐ3作目の小説である。「オペラ・オペラシオネル」が1994年12月に刊行されたことを考えると、概ね22年もの歳月を隔てたことに…